第9章 Heal
「もう察していると思うが、ヒーロー殺しの件についてだワン。件の三人は免許を持たず個性を使用し人に危害を加えた……通常であれば彼らの行動は罰せられるワン」
「そ、そんな……!死人が出なかったのはみんなが戦って守ったからなんですよ!それに彼らって、私は……」
罰なんて、そんなの理解できない。動揺する私を宥めるように面構署長は続けた。
「通常であれば、と言ったワンよ。君は個性で攻撃していないだろう?彼らにはもう話をして、今回の件は公表しない事に決まったワン」
面構署長は公表しなければ罰は無いこと、ヒーロー殺しはエンデヴァーさんが倒し捕らえたことにする旨を淡々と述べた。
「人を傷つけず、彼らを守ろうとした君の行いは賞賛されるべきなのに、それもなくなってしまうワン。……本当に申し訳ない」
「そんなのいいです。みんなが前衛で頑張ってたから攻撃まで至らなかっただけで、状況が違えば私だって戦っていました」
昨夜の出来事を思い出してきつく拳を握った。
もっと早く辿り着いていたら。ケンとはぐれなければ。後悔したところで結果は変わらないとわかっていても、思わずにはいられなかった。
「大人のズルに巻き込む形になってしまって申し訳ないワン。今回の件、話を合わせてくれると助かるんだが……」
「わかりました」
「迷いがないな、マリーは。あの子らが大切なんだねぇ」
ヤマゴンはにこにこ笑いながら私の頭を撫でた。私は気恥ずかしくなって小さな声で、友達なので、と返した。
面構署長との話を終えるとヤマゴンも仕事に戻っていった。申し訳ないことにヤマゴンは半年間の減給処分との事だった。また、ケンはヤマゴンと署長にこってり絞られたそうだ。
私のせいで迷惑をかけてしまった。退院したらもう一度ちゃんと謝ろう。
病室はまた静かになった。もうじき検査だ。
溜息を一つ吐いて、掌を見つめた。