第9章 Heal
一夜明け、保須総合病院。
負傷した三人と共に私も検査入院をしていた。必要ないと言ったのだけど、ヒーローや警察、そして友人達により半ば無理やり押し込められた。
三人は一緒の大部屋だと言うのに、私は個室で一人だ。男女分けるのは普通だと思うが、なんで個室なんだろう。
「ふぅ……」
元気なのに入院なんてなぁ、と溜息を零す。
私はいいからこの部屋を他の怪我人に回してあげて欲しいと思う。
みんなの怪我の具合、大丈夫だろうか。後で看護師さんに聞いてみよう。
ベッドの端に腰かけ足を揺らしながら考えた。入院着はなんだか落ち着かないし、一人は気楽だけど何もすることがないと寂しいものだ。あれだけのことがあった後だから余計にそう感じた。
扉がコンコンと音を立てる。
引き戸を開けて現れたのはヤマゴンだった。
「マリー、退屈そうだなぁ」
「ヤマゴン!ごっごめんなさい!迷惑かけてしまって……」
「座ってなさい」
「は、はい……」
思わず立ち上がったら、ヤマゴンは溜息をついて艶やかな頭をわしわしと摩った。
「お前さんは本当に……。ケンからはぐれたって報せを聞いた時は肝が冷えたよ。おまけにヒーロー殺しと交戦してたときた!」
「うう……すみません……」
「なに、怪我がなくてよかったよ。署長が話があるそうでね、そろそろ来るはずだよ」
しょちょう?
なんのことやらと首を捻る。私の疑問に答えるように病室の扉は開かれた。しょちょうは体の大きな、犬の人、だった。
「こちら保須警察署署長、面構さんだよ」
「……!こ、こんにちは」
「やあ、元気そうだワンね」
名前の通り迫力のある顔だ。面構署長は突然すまない、と前置きをしてから用件を話し始めた。