第2章 バスタブの花
何日かして、そのガキは目を覚ました。
どこかの国で見た硝子ケースに入れられた人形をふと思い出した。
「今日から俺の奴隷だ」
目覚めの一言としては最悪だろう。
びくりと肩を揺らし、ゆっくりと頷く。
葉巻を燻らせながら、真珠のような肌に尖った鉤をそっと当てる。
「っ…」
眉を歪められ、痛覚はあるようだ、という当たり前のことを再確認させられた。
そうでもしないと、あまりにも作り物みたいでますます乱雑に扱いそうだった。
いっそ壊れ物のようだったらまだマシな扱いが出来たかもしれないが。
ガキの体力が回復してから、最初にさせた仕事は、入浴だった。
能力と引き換えに手に入れたこの身体は、水分を前にするとあまりに不便だ。
が、接客も兼ねている仕事。
避けて通るわけにもいかない故に、使用人や手伝いはつけていた。
都合よく、自分のタイミングで出来るようになる、というのがミソだった。