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水宝玉と雪華【ONE PIECE】【裏】

第6章 におい


すやすやと寝息が聞こえる。
昨日広すぎたベッドは、漸くいつものスペースに落ち着いた。
柄にもなく、むき出しの背中をやわく撫でる。
触り心地も真珠のようだと思った。
相変わらず付きまとう、コイツのにおいではないものに、若干のイラつきを覚える。
「プルルルル」
低い電伝虫の声が聞こえ、サイドボードに手を伸ばした。
『サー、お楽しみだったかしら?』
「なんの用件かだけ言え」
虫の居所は、何と言っても悪い。
おちょくられるような台詞に腹がぐつぐつと煮える。
『ちゃん、社長が喜ぶかしらって、真剣に香水選んでいたのよ。
だから、褒めてあげてね、って言いそびれて。
それだけよ』
一方的に切られた通話に呆然とする。
「マセガキ…」

それに振り回されていたのか。
たったそれだけのことに、この俺が。
ふっ、と思わず笑ってしまう。
何故こんなに振り回されているのか。
未だ説明のつかない感情に、このガキに。

絹のような広がった髪に触れる。
かすかに染み付いた葉巻のにおいと、いつものコイツのにおい。
「てめえに香水なんざ、500年早ぇんだよ」
誰にも聞こえない愚痴を、酒と一緒に流し込んだ。
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