第1章 童話の記憶
刹那、雪と共になにかが降ってくる。
それは、雪というのにはあまりに大きく、あまりに速く、人の形をするまでに時間は掛からなかった。
濡れるのは得意ではない、が、何故か、それを捕まえずにはいられない。
腕に落ちてきたのは、ガキ。
速さに耐えられなかったのか、くたっと気絶している。
氷のように冷えた身体を乱雑に担ぎ、我が城へと戻った。
「どうしたの?それ」
「降ってきた」
説明するのも煩わしい、ありのままの出来事を伝えるが、その女は、意味がわからない、と言った。
それはこっちも同じだ。
「殺すの?」
言われてみれば、拾ってみたはいいが、使い道を考えていなかった。
使用人は事足りている。
すぐに思い付くこともなく、
「起きてから考えるさ」
とまたしてもらしくない答えが口をついてしまう。
今日はすっかり雪のせいで頭がおかしい。
寒いせいか。
客足も止んだところで、使用人に命令をし、湯浴みをさせたガキが戻ってきた。
その瞼はまだ開かず、すやすやと寝息を立てている。
窓をふと見れば、雪は止み、いつもの日光が忌々しく昇っている。
もうじき、全てが溶けるだろう。