第6章 におい
レインベースで暴れている海賊を捕まえながら、はたと我に還る。
自らの手で苦しんだ挙げ句、屍となった物をその辺へと投げ捨て、さっさと地下に潜った。
門を開けたところで、いつものクソガキが跳んでこない。
「ああ、今日か……」
ニコ・ロビンは、あのクソガキをいたく気に入っているらしい。
あちこちに連れ回しては買い物を楽しんでいるそうだ。
あんな女でも、楽しみがあるんだと少なからず思う。
ナノハナまで行くと言っていた。
となると、戻るのは明日か明後日か。
長い一夜になりそうだ、自分らしくもなく、広いテーブルに寂しさを覚える。
『ある日』何が起きたんだろうか。
さっき、ふと思い出した一節に、文字を付け足していく。
書斎の書物にもそれらしいものはない。
何をこんなに固執して思い出しているのか。
馬鹿げている。
窓からのぞく碧い景色。
でかい鰐がぐるぐると回る。
こんな、下らない童話を思い出す時間すら勿体ないというのに。
次の一手を思い描きながら、葉巻をふかした。