第3章 天使か魔女か
いつまで、このままなんだ?
「社長……、具合、悪いですか?」
「……いや」
細い指が心配そうに鉤と肉体の継ぎ目に触る。
「痛いですか?」
「痛くも痒くもねえ。遠い昔の傷だ」
汗ばんだ額に無骨な指を走らせる。
指先の宝石ですら劣って見える、瞳。
真っ直ぐにすべてを見抜いてそうで、たまに嫌気がさすが、嫌いじゃない。
「お前が、あの雪を降らせたのか?」
「…いいえ、出来損ないの私には、そんなことは出来ません」
「出来損ない?」
半笑いで言ってしまう。
「失敗作ですから…」
なんの、と聞こうとするなら、そのあまりにも小さな身体が抱きつき、聞き出すのを拒否される。
飼い主に命令をするなんて、イヤな奴隷だ。
足の間に舌を這わせ、その雪のような肌に、飼い主の印をつける。
「あぁ、ぁ…」
その作り物のような口から奏でられる嬌声が、この城の発展を願うかのようだ。
彼女は果たして、魔女なのか天使なのか。
そのどちらでもない。
哀れな、奴隷だ。