【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第89章 もしも、出会わなかったら。
真っ白な場所から
ピッピッピッ、と規則的に繰り返される音が聞こえた。
その音の先に向かって
目を開いた。
瞑っていたのだと気づいたのはその時で。
それならなんであんなに真っ白だったんだろうと、シミひとつない真っ白な天井を眺めて、それを見ていたのかと思った。
「○○?」
天井を眺めていた私の視界を覗き込むように入ってきた眩しい人。
「目が覚めたのか?」
「……はい」
はい、と答えた声は掠れていて音になっていたかも怪しい。
「名前は言えるか?」
「……○苗字○。○苗字○○○」
「よかった。すぐ医者を呼ぼう」
安堵の笑みを浮かべたその人の顔が見えたのは、ナースコールを押そうと体を離したから。
「1120号室の○○の面会に来ているものです。本人の意識が戻り、先ほど目を覚ましました。……はい、名前は言えてます。まだ意識がぼんやりとしているようですが。はい、お待ちしております」
金髪の、綺麗な人だった。
深い空のような瞳が向けられて、心から安堵したように微笑むその顔。
でも、私は、その人を知らなかった。
「あの、……どちら様ですか」
そう、訊ねる私にその人は、怯えるように静かに首を振って。
「俺が、分からないのか?」
酷く傷ついたその顔を、私は頷けない体のせいで、瞼を静かに閉じることで、それを肯定した。
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