【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第10章 確かめられない想い
「何も聞かずに、帰ってもらえませんか」
「…っ、卑怯だよ」
そんな風に言われたら、それ以上聞けない。
どうしたら伝わる?考えるより先に自然と体が動き透さんの手に、キスをした。
「私はあなたが好きだよ」
今許される言葉を精一杯伝えたい。
その言葉に透さんは頷いて。
「…店に戻りますね」
「邪魔して、ごめんなさい。時間とってくれてありがとう」
透さんが去った後、私もすぐに事務所を出た。
…話してくれないなら、自分で調べる。
私が出した結論だった。
零のことを調べる。
零が教えてくれた方法で。
自宅に戻り、パソコンを立ち上げようとした。何度も何度も電源ボタンを押しても立ち上がらす、こんな時に故障かよってキーボードを乱暴に叩いて……思ってしまったんだ。
最後にこのパソコンを立ち上げたのはいつだった?
零が泊まる前。
零が、私の合鍵を使った日。
あの日まで間違いなくデータはあって、間違いなくパソコンは動いていた。
そんなまさかって、バックアップ用にとっていたUSBを探しても、見つからなくて。
全部、確信に変わった。
零が夜中に入ってきた日。あの日にデータは壊されていて、もう一度作ったデータは…パソコンごと、壊された。
零は、…私に会いにじゃなくて、このデータを壊しに来ていた?
なんで、とまず浮かんだ。
こういう時にパソコンがあれば、と諦めてタブレットを立ち上げて考えをまとめるようにメモに書き上げる。
零は私に隠してることがある。
…仕事だから、とかそういうのだけじゃない、何か。
もっと危なくて大きなもの。
私を疑いまた近づいて来た可能性も考えては…それだけは、嫌だと考えを消した。
でも、もしもその可能性があるなら。
この部屋に何か仕掛けてるかもしれない。
…盗聴器を探しに棚の奥に隠していた発見機を数年ぶりに電池を入れた。
まだ使えるかわからない、だけど試さずにはいられなかった。
玄関、洗面所、キッチン、リビング、と反応を示さない機械に安心した時…寝室のベッド付近のコンセント周辺で音が鳴った。
涙が出た。
…盗聴されていたらわかってしまうかもしれない、声を堪えて涙が止まらなかった。
零のことを、信じられなくなりそうだった。
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