【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第3章 重なるカラダ※裏
ホテルに車を停めて運転席から降りた零は助手席のドアを外から開き私の手をエスコートするように繋いだままで。
その手に引かれながら…初めて、零とした日を思い出す。
お互い緊張しながら、零は初めてじゃなくて。
ずっと気にかけてくれて。
私が初めてだったせいなのか、翌日の朝、腰と下腹部に違和感があって零にそれが気持ち悪いって言ったら嬉しそうに照れながら「ごめん」って言われたんだ。
あの時の幸せな気持ちを思い出したのは、久しぶりで。
「…どうした?」
部屋の鍵をあけて私の顔色を伺う零は、あの日と違っていて。
「不謹慎なんだけどね、…初めて零とした日のこと、思い出しちゃって」
拍子抜けした表情で、部屋へ二人で入りキスをする。
…何回目のキスだろう。
なんだか、随分と慣れてしまったようで。
「勘違いしてしまいそうだ」
抱きしめられて、顔が見えずに鼓膜に直接零の声が響く。
「○○はほんと、変わったな」
“勘違い”しそうなのは私のほうだ。
零が私を求めてくれるこの瞬間だけは零の“恋人”に戻れた錯覚になる。
そして今、私はその錯覚にこの身を沈めたいんだ。
「…零、シャワー浴びたい」
「ごめん」
何に対する謝罪?
零らしくないほど、私は再会してから零に謝られてばかりだ。
「今すぐ抱きたい」
零にそんなことを言われる女は幸せだと、心から思う。
膝裏に腕を通し誘われるように零の首に腕を回す。
両腕で抱え上げられ、ベッドへ運ばれ寝かされた。
「…零、恥ずかしい」
自分がついた嘘の存在は正直、そのとき頭から抜けていた。
幸せを感じたくなかったのに、幸せを与えてくる零が大好きで…だから怖くて。
零の葛藤とか、後悔とか、なにも察することはできなくて。
「黙って」
零に抱かれて、零を感じて、私はいなくなるつもりだった。
だから、何も迷ってなかったんだ。
彼がどんな気持ちで私へ“安室透”の恋人になってほしいといったのか。
どんな気持ちで今私に触れているのか。
このときの私は、何も知らなかった。
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