第9章 召請
船内に置いておくのが憚られた令状を、懐に忍ばせておいたのが功を奏した。
まさかの事態にひやりとしたが、何とかなったようだ。
スモーカーはこの島を去っただろうか。
ハートの海賊団と出くわすことはないと思うが、奴一人相手なら何とかなるだろう。
街へ戻る気にならなかったので、身体を休めるために船へ向かうことにした。
全身くたくたで雨にも濡れて、今すぐ眠りたいくらいだ。
クルーたちはあのまま街で夜を過ごすだろうから、船内はきっと静かに過ごせる。
服は濡れている他、ところどころ破れたり汚たりしているし、短パンから伸びる脚はかすり傷だらけだ。
手首にはスモーカーに掴まれた痕が、くっきりと残っている。
きっと首にも痕がついていることだろう。
ローには明日事情を説明して、早々に島を出るよう提案しよう。
ぐるぐると考えを巡らしているうちに、潜水艦を止めてある岸壁に着いた。
船内への入口には、ローが立っていた。
*
「こんな時間まで何をしていた。」
ローは明らかに不機嫌そうな顔をしている。
私がいないことに気付いて、探していたのだろうか。
最後の会話が言い争いのような形で終わっているため、何となく気まずかった。
しかし、迷惑をかけた事実は間違いないので、素直に謝ることにした。
「すぐ戻るつもりだったんだが、すまない。厄介な奴に見つかって」
「なに?」
薄暗くてよく見えなかったようだが、ローは改めて私の全身を見ると、はっとした。
「!…まさか…お前…」
ローは私の身体を触り、傷痕などを確認している。
「スモーカーだ。単独でルフィを探していたらしい。」
「白猟屋が…?」
ローは予想より深刻な表情になったので、察した私は付け加える。
「スモーカーに襲われて押し倒されはしたが、それ以外は何もされていない。傷も大したことはない。」
「そうか…」
説明に納得はしたようだが、それでもまだ怒りを孕んだ目をしている。
「とにかく中へ入れ。医務室へ運ぶ。」
「あぁ…って…!?」
ローは私を横抱きにすると、船内へ移動を始めた。