第6章 公園にて
なんか、癒される。動物とか飼ってもいいかもなぁ。
なんて思っていると、
「愛実ちゃーん!! はなみずー!!」
しまった、ゆきちゃんから目を離してしまっていた。
目を離した隙に事故など起こらなかったことに安堵しつつ、鞄からティッシュを出してゆきちゃんに駆け寄る。
「はい。ゆきちゃん、ちーん!」
「ふふっ」
後方から吹き出す音が聞こえたが、構ってる暇はない。
「はい、もう1回! ちーん!」
「くっ・・・!ふふふっ」
一体何があるのか。何故笑っているのか。気になっているのは私だけではない。ゆきちゃんも早く鼻をかみ終わるのを待っている。
「はい、おしまい!」
そう言って、ゴミを鞄の中に仕舞えば、ゆきちゃんは待ってましたと言わんばかりに、私の後方へと駆け出した。が、
「愛実ちゃーん!! らいおんー!」
すぐさま半泣きで戻ってきた。ゆきちゃんを抱き上げて宥めながら振り返ると、すぐ後ろに小百合さん。
びっくりした。ちょっとビクッてなったわ。
たぶん、ゆきちゃんの言うライオンは、小百合さんのことだろう。
「怖くないよ。ワンちゃんだよ。ほら、よく見てごらん。可愛いでしょ?」
「へあっ」
鳴き声にびっくりしたものの、ゆきちゃんは恐る恐る小百合さんを見る。
見下ろす位置で安心したのか、ゆきちゃんは足をばたつかせて目を輝かせた。
「ワンちゃん! 可愛いねー!」
「小百合ちゃんって言うんだって。そこのお兄さんのワンちゃんだよ」
「君も撫でてみる?」
さっきまで体を震わせていたいけてるお兄さんがいつの間にか復活して、ゆきちゃんに微笑みかける。
ゆきちゃんは小百合さんよりも、テレビで見慣れたいけてるお兄さんの方に反応した。
「いけてるお兄さんだ! ママがね、いけてるお兄さん好きなんだよ!」
「そうなんですか?」
「あ、私はこの子の叔母で、いけてるお兄さんのファンなのは私の姉です」
いけてるお兄さんがこちらを見てくるので、ちゃんと説明しておいた。
この場に居たのがお姉ちゃんだったらよかったのにね、ドンマイ。
「愛実ちゃんは、うらみちお兄さんが好きなんだよねー!」
「う、うん、そうだね」
子どもの空気よ読まなさは恐ろしい。