第7章 相澤の復帰
USJ事件から2日後、学校は通常授業を再開した。
しかしながら、通常とは違う点が、1年A組には存在した。
終綴が来ない。
たったそれだけのことに不安を感じつつも、過ぎる時間は均等に。
クラスのムードメーカーがいない、何かが欠けたような空気の中で。
いつも通り。
HRが始まった。
相澤は大怪我をしていたし、誰がHRをするのだろうという声も一瞬で吹き飛ぶ。
ミイラのような外見の男、────相澤が教室に入ってきたのだ。
「「「「「相澤先生復帰早ぇ!!!」」」」」
上半身を包帯で一杯にしつつも、平然と入ってくる相澤に生徒たちは驚く。
そして、────見た限りでは怪我していなかったはずの終綴を思い、やはり心配と不安が募る。
ちらちらと、教室の視線が終綴の席に集まり始め──────
「おっはようございまーっす!」
教室の扉が開くと共に、そんな明るい声が飛び込んだ。
ふわり、石鹸の香りが入り込む。
清潔感のある、爽やかな香りだ。
それは聞き慣れた声であり、今日は聞けないと思われていた声でもあった。
──今日は休みじゃなかったの!?
クラスメイトほぼ全員の声が重なった。
「え、なんでそんなびっくりしてるの?
授業あるんだから、来るでしょ普通」
さも当然かのように言われてしまい、クラスメイトたちは首を傾げる。
自分たちが心配するのは変なのだろうか。
自分たちがおかしいのだろうか、と。
「遅刻だがな依田………最近たるんでるぞ」
そして、相澤は終綴をギロっと睨みつけている。
低いその声に、終綴はバッとそちらを向いた。
目を丸くしていて、かなり驚いているようだ。
「お兄ちゃん!?その怪我で動いて大丈夫なの!?もっと休んでた方がっ!!!」
「婆さんの手当が大袈裟すぎるんだ。
終綴に心配されるのは複雑だが」
「ひどいよ、私がいたから脳無は一体で済んだんだよ!?」
ギャンギャンと終綴が喚く。
五月蝿そうに相澤は小さく溜息を吐いているが、皆、同じように固まっていた。
──お兄ちゃんと言ったか今?
──先生も、下の名前で呼んでたような…