第2章 はじめまして
──入試の時も思ったけど、やっぱり凄いなぁ…
とても高校とは思えないほどの巨大な校舎を見上げて、終綴は思った。
周囲にはまだ、殆ど生徒は見受けられない。
それもそのはず、終綴はかなり早い時間に登校していたのだから。
春の暖かい風が、さらっと終綴の髪を撫で上げた。
それに合わせて桜も舞い、入学気分を高めてくれる──いや、気分などではなく、本当に入学ではあるのだが。
早く来たのは、やる気に満ち溢れているだとか、そんな大層な理由ではない。
することがある。それだけだ。
勿論、来たからには上位成績を修めたいとは思う。
でも、所詮はその程度。
自分はこの先、ヒーローの資格を取らなくてはならないのだ。
家族を守るため。
ヒーローになれれば、潤沢な資金が望める。
自分をここまで育ててくれた、恩返しをするため。
これからもずっと、みんなで一緒にいるためなのだ。
──そのためなら、どんな事でも。
よし、と小さく呟いてから、彼女は一歩を踏み出した。
ここから、彼女の高校生活が────始まる。