第22章 研いで、曇る
緑谷はインターンから帰ってきてから、ぼうっとする事が増えた。
何があったのか聞いてもぼんやりとしていてよく分からないし、あんなに熱心だったのに、授業中ですらそんな様子のままだ。
そうなるだけの事件がインターンでは起こったということか。
でも、調べた中ではそのようなニュースはどこにもなかった。
ということはこれから起こるであろうことを憂慮しているのかもしれない。
守秘義務が課せられているのか、ただ話を聞いていないだけなのかはわからないけれど、とりあえず緑谷本人の口から聞き出すのは難しそうだ。
───タイミングからして、イレイザーヘッドからの質問と同じものと考えてもおかしくはない…のかな……
壊理がインターン生らしきヒーローたちと接触したこと。
取引先の取引先が一部逮捕されたこと。
壊理の個性にたどり着きつつあるということ。
緑谷のインターン先・ナイトアイ事務所と、自宅があまり離れてはいないこと。
どれも決定打には欠けていて、自分のそれが予測でしかないのだと思うのだけれど。
もし、これが全て当たっていたとしたら。
───近いうちに、同級生たちを殺すべき時が来るのか。
ナイトアイ事務所はあまり大きくない。
規模としては小さい方だろう。
とするとチームアップを組むと考えるのが自然で、最悪、イレイザーヘッドや他のインターン生にも────と、ここまで考えて苦笑する。
───最悪って、何言ってんだろ。
───私にとっての「最悪」は、家族を失うことのはずなのに。
それ以外には、ないはずだから。
自分に躊躇する理由なんて、どこにもないのだ。
私を拾ってくれた廻のために。
居場所をくれた家族たちのために。
この身が動かなくなるまで、体を張ると決めたのだ。
立ち止まる暇なんてどこにも無いし、同級生の体を慮っている暇なんてもっと無いのだ。
それに、自分がもしプロデビューしたら、同級生たちとはいずれ敵対することになるのだから。
もっと、強くならなくてはいけない。
そう思って、最近はフラリと自宅に寄ってトレーニングだけをし、すぐに一人暮らしをしている家に戻るという生活を始めていた。
自宅で家族たちと一緒に暮らしていた頃に感覚が戻り、感覚が研ぎ澄まされていくのを実感していた。
────そのせいで、授業中では強すぎて若干浮いてしまってはいるのだが。