第22章 研いで、曇る
初のインターンを終えて、週明けの実技授業にて。
「───────、!?」
「─────!!!!!!!!」
ぼうっとしていた。
だから、周囲の会話も、ぼんやりとしか頭に入ってこなくて、うん、くらいにしか返事ができなかったはずなのに。
体が先に反応した。
危険な状況に何度も遭遇しているから、それに慣れてしまったのかもしれない。
感じた凄まじい殺気から距離を取り、その正体を確認する。
それと同時に、今自分が何をしているのかを思い出すが────
───え、依田さん…?
今は戦闘訓練の最中。
3対3でチームを組み、相手の弱点を突き10分以内に身柄を拘束するという課題なのだが。
殺気の主は、終綴だった。
理由は分からないが、何故か、震える。
ゾッとするとは言うが、体の奥から内側から、冷えていくような、そんな感覚。
逃げなくては。戦わなくては。怖い。
そんなせめぎ合った感覚が、緑谷の中で葛藤する。
どこかで感じたことのある気もする。
つい最近、どこかで。
いやしかし、それは授業後に考察すれば良いのだ。
とりあえず今はと仲間たちに向き直るが、峰田と上鳴は顔を真っ青にして冷や汗を垂らしていた。
「ここはぼ─────」
くが囮に、と言おうとするも遅く。
風が通ったかと思うと、3人纏めて縛られていた。
緑谷たち3人が動けなくなったのを確認すると、パッと重い空気は霧散した。
「私の勝ちだね、緑谷・峰田・上鳴」
朗らかに笑う終綴の後ろで、口田と麗日が腰を抜かしたように倒れ込んでいる。
終綴と同じチームだったのだろう。
あまりの殺気と素早さに、暫くは誰も口を開くことができず。
ただ、爆豪はやはり訝しむような目で終綴をじっと睨みつけ。
そしてもう1人。
プレゼント・マイク────この日は相澤の代理で入っただけだったのだが────だけが、何かを考えるようにして終綴をじっと見つめていた。