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水面下の梟【ヒロアカ】

第21章 暗い場所で輝く


***
スラムでの夜は暗くて、寒い。
それが冬であるなら尚更だ。
古びた家屋は勿論明かりなど点いていないし、蝋燭などという珍しいものを今どき持ち歩いている者もいない。

何人かは、寒さを凌ぐために小さく縮こまっていた。
ここら一帯は治安が悪く、油断すると命を落としてしまうため皆物陰に隠れている。
近くの都市部まで出向き裏稼業に励む者もいたし、様々ではあるがしかし活動的な人間はあまり多くはない。

そして少女も、活動的ではない者のうちの1人だった。
歳は2桁に満たないくらいだろうか。
背は低く、体の線は細い。
痩せているというよりかは、引き締まっている体つきだ。

歳には不相応な筋肉量と完成されすぎた顔立ちを持つ彼女は、虚ろな目をして地上を見下ろしていた。
冷たい風が、少女に体当たりする。
ボサボサの髪が、吹かれて揺れていた。

少女がいるのは、とある廃ビルの屋上。
彼女は念の為と毎日寝床を変えているが、今日はここにしたらしい。動きはゆったりとしていて、疲れと眠気が垣間見える。

手に持つ上質そうな毛布には、暗がりでも分かるほどの鮮血がこびりついている。
まだ乾き切っていないようで、周囲には僅かに鉄の匂いが広がっていた。
少女に怪我をしている様子もないから、他の誰かのものなのかもしれない。

少女は足音を全く立てずに歩き、周囲に人がいないことを確認してから貯水タンクの影に隠れて蹲る。
毛布を全身を覆うようにしてかけ、そのままゆっくりと目を閉じた。


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