第21章 暗い場所で輝く
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電話を切り、はぁ、と青年────治崎は溜息を吐いた。
「オーバーホール、電話だ」
そんな治崎に声をかけるのは小さな人形のような何かだった。
その人形はヨチヨチと歩き、電話を治崎に手渡した。
治崎は屈んでその手から受け取る。
「敵連合、死柄木だ
この前の返事を聞かせてやる…と」
無言でそのまま受け取り、いくつか言葉を交わして手短に済ませる。
そして切った電話を人形に返した後、なぁと言葉を落とした。
人形と、傍にいる者に話しかけているのだろう。見ただけでは性別を判断することはできないが、発した言葉でどちらも男なのだと解る。
「もし俺が───────としたら、終綴は怒ると思うか」
2人の男は、即答。
「怒るでしょう」
「ああ、怒るな」
「そうだよな」
わかってる、とでも言うように治崎は呟く。
「…敵連合の事ですかい」
白いフードの男が訊ねる。
彼もペストマスクを付けているが、形は治崎のものと違うようだった。
ああ、と治崎は頷いた。
「雄英に入ってから…本人は不本意だろうが、あいつは変わった。揺れている
大切なものが、増えたんだろう」
「…俺はここで」
小さな人形は、その場を離れる。
終綴について話すことは何も無いと言うように。
「ミミックは相変わらずですね」
白いコートの男が目線だけで人形を追ったあと、で、と治崎に向き直る。
「今更と思いやすが
終綴はもう戻れないほどにはこちら側に踏み込んでる」
「だが…巻き込んだのは俺だ
あの頃ならまだ、戻れたはずだろう」
「マスクを渡す時の事ですかい?
それとも───────」