第19章 フクロウは舞い降りる
「明日から普通の授業だねえ!」
「やっと夏休みも終わりかー」
「色々ありすぎたな」
「一生忘れられないよ…」
その日の訓練も終わり、共同スペースで寛ぐA組メンバー。
紅茶を嗜んだり菓子を食べたり、クラスメイトと話したりスマホをいじったりと過ごし方は様々だ。
この日は、珍しく終綴もその場にいた。
「依田、もう体調は大丈夫なのか?」
切島はというと、心配そうに終綴の顔を覗き込んでいる。
あはは、と終綴は頬を掻く。
「ごめんね心配してくれたの?
ちょっと色々あったせいかな、体調は大丈夫なんだけど、メンタルに来てて…」
「そうか…無理すんなよ」
考える。
爆豪のあの言葉。
────『女は選べよ』
何か隠しているのだろうか。
だが、何と訊けばいい?
隠し事をしているのかなんて、直球に訊いて答えてくれる人間なんているだろうか?
そもそも、この問い自体が漠然としすぎていないか?
「あのさ、」
でも。
この不安を。
仲間である終綴に抱いたままだなんて、切島には耐えられなかった。
何のこと、と何もしてないのだと、そう態度で教えてくれればそれでいい。
だから。
そう、言ってくれ。
その不安を、考えすぎだよと笑ってくれ。
しかし切島が不安を発するより早く。
「オイクソ髪………こいつ借りるぞ」
「えぇ!?」
終綴が驚くのにも構わず、爆豪は彼女をグイッと上に引っ張りあげた。
腕を掴み、立てと言っている。
「クソ女。
………話がある。俺の部屋に来い」
ざわざわ。
その場が一瞬静まり、そして騒ぎ出す中。
終綴と爆豪、張本人たちだけがそれを気にせず、エレベーターへと乗り込んだ。