第16章 削がれた爪
『緑谷くんたちの見舞いに行かないか』
そんな短い文が、終綴のスマホを震わせた。
振動に合わせて、付けていた華奢なキーホルダーも一緒に揺れる。
どうやら、クラスのグループチャットのようだ。
『行く』
『いつにする?』
『みんな、大丈夫かな…』
『何か買ってこーぜ!』
ポンポンとレスポンスは紡がれていく。
『私も行く!!』
それだけ送ってから、終綴は部屋のテレビをつけた。
チャンネルは、民放に固定されている。
野次馬性の高い番組だが、それで充分のようだ。
無言でそれを見つめる。
探さずとも、やはり雄英の合宿襲撃が大きく取り上げられていた。
何度も襲撃を許す杜撰な管理体制。
生徒を誘拐されてしまう危機管理能力の低さ。
様々な点から、雄英は非難をあびていた。
爆豪が体育祭で見せた粗暴さが、敵連合に目をつけられた原因なのではないかという声も上がっている。
教育不足なのでは、と。
暫くはこの話題でもちきりだろう。
学校側はどう対応するのだろうか。
『警察は捜査を進めており────』
ニュースキャスターの言葉に、終綴は眉を顰めた。
何の捜査を進めているのだろうか。
敵連合だと相手はわかっているのに。
───あ、そっか、爆豪の居場所含め、アジトを探してるのか。
USJ事件が起きてから、ずっと捜査は難航している。
死柄木弔の出自や黒霧と呼ばれる男の正体、敵連合のボスなど、全てが「捜査中」のままなのだ。
───ま、警察が無能だから、私も助かってるんだけどさ。
敵連合との一連では、自分は毎回被害者側だ。
疑われる余地すらないのだけれど。
『では、明日の11:00に××駅集合だ!
見舞い品を買ってから行こうではないか!』
そんな飯田のメッセージにスタンプを1つ返してから、終綴はスマホの電源を落とした。
それから、クローゼットの前に立つ。
───見舞いが終わったら、実家に帰ろう。
久々に着る、その服を眺めてにこりと笑った。