• テキストサイズ

水面下の梟【ヒロアカ】

第13章 日陰者



「……とまあ、そんなことがあって
行先は当日まで明かさない運びとなった」

相澤がHRでそう伝えると、1番にやはり終綴がええっと声を上げた。

「えっ、そんなに大変な事になってたの!?
ごめんね私先帰っちゃって…大丈夫!?」

「だっ大丈夫だよ!
結果何も起きなかったし…」
「依田君が謝ることはないだろう!!
寧ろ君は被害を免れたんだ、安堵すべき事ではないか!?」

「あー、依田がいたら戦闘になってそう」
「ショッピングモールくらい壊れてそうだよなー」
「依田が帰ってて寧ろラッキーだったんじゃない?」
「ひっどい言い草!」

騒ぎ始める生徒たちを見て、それから相澤は終綴に視線を遣る。
こちらからの視線には気付いていないようで、変わらず騒いでいる。

​───………。

終綴が帰る直前まで一緒にいた上鳴と葉隠によると、麗日が通報する、本当に直前に慌てて帰って行ったらしい。

それまで普通の様子だったのに、と。

店を出た瞬間目を見開いて、慌て始めたのだと。
終綴は人の気配に敏い。
USJで1番に異変に気付いたのは彼女だし、背後から近付こうとすると、それが誰であっても、敏感に反応する。
生まれ持った、天性のものなのだろうか。
わからないが、

​───終綴が帰ったタイミング、死柄木との遭遇…これは偶然か?

脳裏で再生されるのは、終綴が脳無を圧倒しているシーン。

違和感は他にもある。

​普段は遅刻寸前なのに、入学式の日だけ早く登校し、職員室に来て​「わざわざ」自分に挨拶に。
終綴は、自分の妹に個性の類似した別人なのではないかと思う事がある。

あまりにも、あまりにも​────違いすぎる。

普通の中高生​────素人の行動ではないだろう、と思うことがしばしば。
実技授業内での行動も、考察も、他のクラスメイトたちから抜きん出ているのは頭1つ分どころの話ではない。
普段は協調性の塊だというのに、戦闘になると血気盛んで闘争心は剥き出しになる。
それなのに、どこか手を抜いているように見えてしまう。

まるで必死に、素を抑えているかのように。

​───考えすぎか。

そんな考えを振り払うように、相澤は息を吐き出した。
邪念も全て、消えてしまえばいいのにと思いながら。



/ 287ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp