第13章 日陰者
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『昼間、木椰区のショッピングモールで、雄英高校の生徒と敵連合のリーダー格と見られる青年が遭遇しました。
ショッピングモールは一時的に閉鎖され、警察は周囲を捜索しましたが─────』
暗い部屋は、テレビだけが光り、喋っている。
その光が、1人を照らしていた。
メリハリのあるシルエットから、女性だという事がわかる。
長い髪をくるくると指に巻き付けながら、そのテレビをじっと見つめていた。
じっとりとした、この季節特有の風が部屋に入り込む。
その風に揺らされたのは、1つのハンガーだった。
どこかの学校の制服なのだろうか。
グレー地に深緑のラインが入ったジャケットに、白シャツ・赤ネクタイ・深緑のプリーツスカートがかかっている。
僅かにテレビの光が届き、その色が微妙にわかる。
「……………」
しかし女は揺れるハンガーには目もくれず、テレビを無言で眺めていた。
『…続いてのニュースです。
先程○○で、男女5名が何者かからの襲撃を受けました。
被害者は以前××で死亡していた男女10名の仲間と見られています。
死体は全て、下半身が分からないほどに破壊されており───────』
「……なるほど」
呆れたように呟く。
どうやらこのニュースを探していたらしい。
溜息を吐き、携帯を取り出す。
「見たよ」
『──』
「はは、死柄木弔のおかげであまり大きなニュースにはなってないけど」
『─────────────』
「あれさ、今日?」
『───────』
「だと思った、連絡つかなかったからね…
いやあ、それにしても、愛されてるなぁ私」
『──────────』
「…愛してるよ」
『────』
「………。
合宿が近くてね、うん、準備とかあるし、うん、じゃ、またね!」
相手の返答を待たずに切る。
へなへな、とその場に座り込んだ。
俯いたその顔は真っ赤だ。
愛してる、とか。
こういう時にだけ言うなんて狡いよ。
女の呟きは、誰の耳にも届かないまま、夏の暑さに溶かされて消えた。
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