第2章 出会い
思わず彼女の肩を掴み顔を見る。肩越しでも鼓動が伝わってくるほど緊張しているが、上目遣いでこちらを見つめながら口を開く。
「好きです…ハデス様。もしご迷惑でなければわたくしを娶っていただけませんか?」
「迷惑…だなんて思ってないし願ったり叶ったりなんだけど、色々飛ばしてない?そこは大丈夫?」
「え…?」
「え??」
一瞬フリーズする2人。まさか結婚しようから始まるなんて思ってもみなかった。
「恋人からじゃなくていいの?」
「こい…びと?」
初めて聞くような反応するじゃないの。そういえば異性と2人っきりになったことないって言ってたな…じゃあ仕方ないかもしれない。……もしかして、
「ゼウスに何か言われた?」
「ゼウス様から…?ハデス様のことを伺った後、ハデスの妻にならんかーと提案されました。」
それだ………あいつが余計なこと吹き込んだから色々すっ飛ばしたのか。落ち着こうと深呼吸し、軽く咳払いしてから続ける。
「ん゛ん゛っ…まず恋人って言うのはお互いが好きなのが前提ね。世の中には色んなタイプがあるんだけど、一般的なのは生涯大切にしたい人を恋人にするタイプかな。」
「お互い好きならば、夫婦になるのが先だと何か不都合があるのですか?」
「俺達は今日会ったばかりだよね?」
「はい」
「今日から夫婦になると別れることが難しくなるんだ。」
「…?なぜお互い思い合っているのに別れるんですか?」
「俺とコレーちゃんが生きてきた日常は別物だと思うんだ。一緒に過ごす上で自分では考えられないことが突然起きて、もう別れたいと感じるかもしれない。」
「それは承知の上ですが、わたくしは別れたいとは思いません。」
「なるほどね…お互いのことを知ってないとびっくりすることがたくさん出てくる。それを恋人という関係の間に慣れさせて晴れて結婚して夫婦になるのが典型的なパターンなんだけど…」
腑に落ちない表情で考え込むコレー。彼女の中では既にハデスと添い遂げる覚悟が芽生えており、恋人という関係はいつでも逃げられる保険のように思えて仕方なかった。
ガシャン!!!!
ドアの向こうから激しい音に思わず振り向く2人。
「一体何が…見てきます!」
ハデスの元を離れ、ドアへ向かうコレー。
「気にしな……ったくアイツら…」