第2章 出会い
「植物を生み出すだけで君に一目惚れしたと思うのかい?」
「……わからないです」
真実を告白した拍子に何もかも洗いざらい言ってしまった方が彼女の気持ちもハッキリわかるかもしれないし、自身も改めて整理がついて楽になるのではないだろうか?思い立ったが吉日。この際全てをぶち撒けてしまおう。
「仕事の気分転換に地上を見てた時、たまたまニンフ達と花を摘んでいる君を見た。眩しいほどの笑顔と優しい声その周りにいるお友達、嫌われ者の俺様とは真逆の存在で…羨ましいと同時にすごく綺麗だと思った。こんな子が隣にいたらどれだけ救われるだろう…その時の俺は後先考えず水仙を使って君をおびき寄せ、冥界まで攫った!ハァ……」
「……」
これを聞いた彼女はどんな顔をしているのだろう…俺自身のせいで創りあげられた怒りや悲しみ、怯えに満ちた表情なんて見たら、きっと…いや必ず後悔する。
「出会い方が違っていたら…もっと素晴らしかったのでしょうか…」
「………え」
思いもよらぬ言葉に驚きが隠せない。先程の思いなどすっかり忘れて彼女の方を向くと顔を真っ赤にさせながら両手の力を使い、ゆっくり身体を起こしていた。
「たしかに驚きはしましたが…内心とても嬉しかったです。ずっとお会いしたいと思っていた方が突然目の前に現れたのですから。…失礼ながら、ここの部屋に案内されるまで上の空で…ろくに受け答えもできず申し訳ございませんでした………わたくしはお母様やニンフ達が言うような方は、自分がした事に対して後悔や自責の念は湧かないと思います。ハデス様のネガティブな部分が目立っているだけで、皆さん本質を知ろうとしていないんです…」
時々目線をこちらに向けながら思いの丈を話すコレー。
「冥界に来てから丁重に扱っていただいてますし、こちらが本来のハデス様だとわたくしは思っています。ただ…」
「ただ?」
「…愚察ですが、ハデス様の中に何らかの焦燥があって大胆なアプローチになってしまったのかと」
「なるほどね…」
「その"何らか"の要因がわたくしだったら嬉し……あっ、そのっ…」
「例えば?」
「ッ…」
ハデスは自身に対する好意を聞き逃さなかった。確信が欲しい。口を滑らせた彼女をじっ…と見つめながら言い逃れさせない問いをかける。