第14章 運命の番(過去編)1.5
このデートでなにかはあると思っていたが、まさか俺達が男のα性に絡まれるとは誰が予想出来ただろうか。
数分前までは春枝と一緒にいたが、親から連絡が入ったという感じであった。最初は気にしないようにしていた春枝も何度もコールが鳴り止まず、渋々出るという形で少し待っていて欲しいと席を外す。少しばかり待っていたら、α性を振り撒く男達にナンパされたのだ。自分達が顔がいいのは理解しているが、男というのは初めてで驚く。なにより、匂いが酷い。
「お兄さん達カッコイイねー…俺達と一緒に遊ばねぇ?」
「あ゙?」
「悪いけど間に合ってまーす」
「まぁまぁ、そうツンケンしないでよー…お兄さん達Ωでしょ?美味しそうな匂いしてるねぇ…」
「連れがいる、そんな暇ねぇんだよ」
「そうそう、他当たってくれない?」
「そう言わないでよー…α性とのセックスって気持ちいいんだぜ?ね、お試しとしてさー…」
コイツ等、先ずはTPOを弁えろよ。ここは水族館で今は昼前だったりする。一般人が多い中でなんつー話おっぱじめてんだ。警察にしょっ引くぞ。それにΩに対しての余りにも失礼極まりねぇ…今のはセクハラ発言だ。
後、何気なく腰へ手を回そうとするな。気持ち悪ぃ…そう眉を顰めて振り叩けば、α性の男達はニタニタと下品に笑った。
「いいねぇ…お兄さん達見たいな反抗的な態度を取るΩを屈服させるのが楽しいんだよな」
「沢山気持ち良くさせてあげるから、一緒に来いよ」
「ちょ、俺等も流石にーー…」
「おい、いい加減にーー…」
手首を掴まれ、無理矢理引っ張ろうとする男達にいい加減面倒になって来て舌打ちする。萩原と見合わせて拘束するように体を捻らせようとすれば、ブワッと体が硬直するようなα性のフェロモンが水族館を包み込む。沢山のβさえも目を見開き、耐え切れなくなるように床へ座り込む人がチラホラいた。α性の男達はガタガタと体を震わせる。それはまさに獣だった、Ωの俺や萩原は当てられてしまいクラクラする。床に座り込み、体が熱を帯びる。
「ふふっ…私も混ぜて下さらない?」
「ひぃっ!あ…ぁ…」
「あら、なにを怯えているのかしら?私もα性なの…ご一緒しましょうよ。ね?」
「ひぃいいっ!」
コツコツと長くスラリとした脚はこちらへと向かい微笑みながら男達へと近付くと、ぽつりと近くにいた俺達だけが聞こえる声で呟いた。