第4章 運命の番(3)…緑川景光>>1
私の番、緑川景光は通い妻だ。いつの間にか家にいて、いつの間にか手料理を振る舞い、仕事で帰って来た私に向かって「おかえり」と笑いかけてくれる。しかし合鍵を渡していないので、警察官。それでいいのか?と思ったのは内緒である。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも…」
「ご飯を食べてお風呂に入ります」
「そこは最後まで言わせろよー…」
ガックリとわざとらしくショックを受けてから項垂れる景光さんを見て笑う。準備をして来るとしょぼくれるように私から離れていく為、そっと手首を掴み振り返らせて前屈みに引っ張るとカプリと唇を軽く噛んだ。直ぐさまぶわっと顔を真っ赤にさせて反射的に離れて行く景光さんは唇を手の平で隠し押さえていた。視線をあちらこちらと泳がせているため、私は笑って口を開く。
「デザートは貴方で」
「ぅっ、あ…わ、分かった…」
「着替えて来るから宜しくね?」
玄関で佇む景光さんを微笑ましく思いつつ通り過ぎる。寝室に荷物をおいて、スーツを脱ぐと部屋着に着替えた。肩を揉み解し軽く背伸びをする。リビングへ向かえば嬉しそうに微笑み、キッチンでお玉を片手に迎えてくれる景光さんがいた。やっぱり通い妻だわ…可愛い、好き。となる私は仕方ないだろうと思う。
「今日の晩御飯は?」
「ハンバーグとミネストローネ、サラダ。デザートはプリンだな」
「わぁ…美味しそう。いつもありがとうございます、景光さん」
「あ、いやぁ…俺が勝手にやってることだし」
「それでも、私の家にいて夕飯を作って待っていてくれる番がいるって嬉しいことなんですよ?」
「ぅ、ううっ…」
盛り付ける手伝いをする私に、真っ赤な顔で俯く景光さんの顔を覗き込む。見ないでと私から顔を背ける景光さんが愛おしくて前から勢い良く抱き締めた。いい身体をしているとスリスリ頬擦りする私に、ぶわっとΩの匂いを溢れさせた。いい匂いでムラムラするが、理性を効かせて身体を離れさせる。うっとりと瞳を潤ませて私を見下ろして来る景光さんがいたりしたがまだ駄目だと笑った。
景光さんの手料理を食べて、デザートのプリンを頬張れば微笑ましそうに私を見て来る。美味しい?と尋ねるのは日課で、私が笑って頷くと嬉しそうに目を細めてくれる。
ゆったりすごすようにソファーで寛ぐ私と景光さんがいて、そっと手を重ねて優しく握ってくれる。ムズムズと待っている景光さんを見上げた。