第14章 運命の番(過去編)1.5
萩原side。
まさか本当に運命の番がいるなんて、誰が想像出来ただろうか。
ーーー。
俺は昔から要領が良かった。学生の頃から色んなタイプの女の子と付き合ったことがあったし、松田と同じくかなりモテた。松田からはその女癖の悪さをなんとかしろと言われたことがあるほどに取っかえ引っ変えしていた。警察学校へ行けば、松田は勿論、降谷や緑川、伊達と出会い忙しいこともあり女性関係も落ち着いた。
「お前、防護服着ろって何度いったら分かるんだよ」
「んー…だって暑いし動きにくいし、なにより格好悪いじゃんか」
「お前なー…」
松田の声を聞きながら「はいはい。また着るって…」なんて伝えて曖昧な返事を返す。俺は、この時慢心していたんだろうと後悔する。犯罪率が多いこの米花町で、また爆発物マンションの一室で発見されたようだ…沢山の人を避難させて、最後の最上階の一室だった。まだ開けていないというのに、ふわりと香るのはαの匂い…不味い、不味い、不味い。そう思っていてもΩだった俺は逆に関わりたくて仕方ない。
俺は昔からΩであったが、βに近いΩであり余りαの匂いを感じられない。付き合っても長続きしないのはそのせいで、そういうことに疎いので発情抑制剤も飲んでいなかった。
だから初めてだったのだ、こんなにもαの匂いを感じられたのは。震えた手を必死に押さえ込み、ドアをノックする。若い女性の声を耳にして、ドアが開く。目が合う前に感じられるぶわっと感じたαの匂い…視線がかち合うと目の前がクラクラしてしまい、中が疼いて濡れてしまい気持ちが悪い。
「お、お兄さん…大丈夫ですか?」
「ん、くっ…は、はぁっ…」
「ちょ、ちょっと待って下さいね!」
ズルズルと座り込んでしまった俺に対して、高校生くらいの美少女は赤く頬を染めながらも慌てた様子で部屋へと戻って行く。直ぐに玄関先へ戻って来た彼女は水が入ったペットボトルと発情抑制剤の薬を手渡して来た。しかし飲めるような状態じゃない、今すぐ俺を犯して項へ噛み付いて欲しい。そのことしか頭から離れない。周りの爆発物処理班も何事かと集まって来てゾクリと恐怖した。この匂いにつられてレイプなんてことがあったら…そう思うと震えが止まらない。その時、薬を口へ放り込まれペットボトルを口に含んだ彼女は噛み付くような口付けをして来た。ゾクゾクと体が歓喜に震える、先程の恐怖はなかった。