第7章 運命の番(過去編)2
「家までお送り致しますね、それで少し落ち着きましたか?」
「その…すまなかった。初対面の女の子に抱き着くなんてどうかしているな…」
「いいえ、初めてのヒートなら仕方ないでしょうし…戸惑うのは当たり前です。お気になさらないで下さい」
「あの…君はいったい」
「桜花春枝と言います、ただのαの中学生ですよ」
「あるふぁ…そうか、やはりか…」
「αと乗車はやっぱり嫌ですよね、私のせいでヒートを上げてしまう結果になってしまったのなら逆に申し訳ないんですけど…」
私は今お兄ちゃんの家へと向かっていたりする。彼は高校受験生のようだ。私とは5歳程離れているようで、いつも通りに学校へ向かっている際にヒートが始まり、戸惑いや自分自身がΩだったショックでどうすることも出来なくてうずくまっていたようだった。丁度私が通りかかって良かったと思う、そうじゃないとあの甘い匂いに釣られてレイプなんていう性犯罪事件にまで発展するだろうと思ったからだ。
相変わらずαの私が気になるのかチラチラ何度か見て来るお兄ちゃんの視線をかち合わせて、にっこりと安心させるように穏やかに笑って見せるも、胸をギュッと強く握り締めて恥ずかしそうに顔を背けていた。αを見るのは初めてじゃないだろうに…そんなに気になるのだろうか。それにしてもこの心地いい甘い匂いはどこか、数年前に私を助けてくれた優しくカッコイイお兄ちゃんに思い出すなとふと思った。
ーーー。
お兄ちゃんの家へと送り届けた。今日は一日学校を休んで病院に行ったほうがいいとも伝えた。私の行き付けの病院へ連絡し、話しは全て通してあるからと彼の両親にも説明する。中学生の私を見てかなり驚いていたけれど、直ぐに理解して行動を起こしてくれる人が良かったと思った。一通りのことを終えて車に乗り込む私にお兄ちゃんが呼び止める。
「春枝…」
「はい、どうしましたか?」
「俺…あの…いや…先ずは、そうだな。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。未然に防げて良かった…お兄ちゃんは顔が可愛いから危なかったですからね」
「かわっ…今更で申し訳ないけど俺は降谷零という」
「!…じゃあ零さんですね、宜しくお願いします」
「あっ!いや…なにか分からないことがあった時、連絡しても構わないだろうか」
初めてのヒートに不安なのだろうと思い私は連絡先を手渡した。