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裏『探偵』αな女がΩの男達に求愛される話。

第21章 運命の番(過去編)0


本当は立っていることすらしんどいだろうに、殺気立った様子で私の動作を観察するように距離をとる青少年は、やはり相手の力量をしっかりと理解しているのだろう。若いのに素晴らしく優秀だとうっそりした。

「夜食を使用人に作って貰ったんだ。私と一緒にどうだろうか」
「俺が食うと思っているのか」
「毒は入っていないさ、なんなら私が毒味しようか?なにより、私の信頼する使用人達の手料理に毒を盛るのは失礼極まりない…食事に罪はないからね?」

三日間飲まず食わずだったのが相当こたえているのか顔色が悪い。私は目の前の青少年をエスコートするように客間の寝室へとドアを開けて、どうぞと目を細め口角を上げた。

ーーー。

静かに食器の音と、落ち着きのある曲を流した。渋り気味にスープを見下ろしていたが、いい匂いには勝てなかったのかゆっくりとした動作でスプーンを持ちすくいながら口元へ伸ばし一口含み飲む。優しい味に目を見開き、逞しい体と唇を大きく震わせた。ガツガツとパンやスープを忙しなく平らげる。料理は逃げないから…落ち着いて食べなさいと微笑み声を掛けた。ボロボロと涙を溢れさせて嗚咽を漏らす青少年に、おかわりはまだ沢山あるから気軽に言いなさいとにこやかに自分もスープを飲んだ。私は少しばかり茶目っ気のある顔で青少年を見ると口を開く。

「これで君も共犯だね?」
「はっ…?」
「余り夜食のことを妻や娘には言わないで欲しいんだ。やはり体に悪いから…心配をかけさせてしまうと申し訳なくてね?」

大袈裟に肩をすくませる私に、青少年は腫れぼったくなった目を乱暴に拭っていた。使用人には既にお風呂の準備も伝えてあるし、着替えも用意した。入浴している間にベッドメイキングもお願いしてある。理由はどうあれ春枝が連れて来た彼は紛れもなく客人だ、それくらいのことはさせて欲しい。

「なぜ…見返りのない俺に、優しく出来るんだ。俺は今先程、あんたを殺そうとした男だぞ!」
「それは君が娘の客人だからだよ。君がどんな理由があり、そんな痛々しい怪我を負ったのか私には分かるはずもない…だが血塗れの君を愛する娘が助けたいと言ったんだ。父親である私がすがるように助けを求めた娘の手を掴まないでどうするんだ」
「…親子揃ってあんたらは変わっているな。普通なら関わりたくはねぇだろうに」
「父親からの目線ならば、全くもって同意見だね…」
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