第18章 運命の番(3)…緑川景光>>3
「バーボン!えっ、なんでだ…?」
「カンパリっ…お前は無茶をし過ぎだ!」
「結果的は助けられたんですから、そんなに怒らないで下さいよ…零さん」
「はぁ、全く…」
盗聴器や発信器はありません、先ずは私のセーフハウスで話をしましょうか。そう凛々しいながらも俺を安心させる笑みでもう大丈夫だと彼女は頷くから、張り詰めていた気持ちが切れてしまいボロボロと涙が溢れた。そんな時も寄り添って背中を撫でてくれるから、彼女に甘えるように寄りかかった。
ーーー。
ゼロに一通り話を聞く、もしかすると警視庁の公安で裏切り者がいる可能性もあり安易に署へ戻ることは危険だと判断した。俺の死体を偽装しなければいけなくてゼロは一度署へ戻ることとなる。手伝うと名乗り出る彼女にゼロは今は景光の傍にいてやって欲しい。と伝えられて彼女もまた俺を見つめると笑顔で分かったと頷いた。そして彼女はふと思ったことを軽々しく口にする。
「私の本名は桜花春枝と言います。ねぇ緑川景光さん…私と同棲してこのまま結婚しませんか?」
ーーー。
偽装結婚から始まる恋というのか、俺は彼女…春枝のことが組織の頃から好きだったから嫌がる理由もなく素直に受け入れるように結婚した。春枝は本当に男前だ、主夫である俺を気遣いメンタルケアは欠かさない。普通にOLとしての仕事もやりつつ、組織の幹部として働き過ぎるくらいに忙しいはずなのに俺の時間もちゃんと作ってくれるのだ。どうしてそこまでしてくれるのか…と不思議に思う俺に対して彼女はうっそりする。
「カンパリ・オレンジですよ」
「はっ?」
「“初恋”なんです…小学生の頃、貴方に助けて貰ったあの日から。一度だけだから覚えていないと思いますけど…」
「そんな…だって、君からは少女の匂いはしなかった」
「景光さんは鼻がいいんですね…まぁそうですね。ネタばらしをするなら、組織の薬品にあるんですよ。匂いを消すという劇薬がね?ハニートラップを行うのに、α性のフェロモンは邪魔になりますから…良くベルモットから貰っていたんです」
口付けやセックスをしない限り、匂いは相手に分からないと俺へ押し付けるような口付けをする。その時懐かしいほどに恋焦がれた少女の匂いがふわりと鼻を掠めた。
「ね?私がどれだけお兄さんを想い慕っていたか、理解出来ましたか?」
「っ…君は」