第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
「…?」
ユーリの剣は、シャンクスの喉元スレスレで止まった。
「…この勝負、おれの勝ちだな」
ゆっくりとバランスを崩す彼女。
その一瞬の隙を狙い、シャンクスは彼女の剣を薙ぎ払った。
ユーリの動きが変わってから、シャンクスは何度か彼女の攻撃を誘導し、大地を裂かせた。
そしてその割れた大地に流れ込んでいく海水。
シャンクスがわざと剣を手放したのは、海水が溜まった穴の手前。
どうやら彼女は、海水が弱点なのを『知らない』ようだった。
狙い通り海水に片足を突っ込んだ彼女は、一瞬にしてバランスを崩した。
…敗北…?…そんなの、アリエナイーーー
ふと、脳内に響いてきた声に、シャンクスは表情を歪める。
意識を失った彼女を抱え上げると、今まで張り詰めていた空気を吐き出すように、ゆっくりと深呼吸した。
「…ありえないことなんて、この世界にはねぇんだよ」
どこか遠い景色を見ながらそう呟いたシャンクス。
その瞳に映っているものは何か。
それを知る者は誰もいなかった。