第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
本当は、いい加減止めようとしていた。
彼らしくないその行動は、一部のクルー達の頭を悩ませていた。
そもそもユーリが船長室にいることを知るのは、ごく少数だ。
ベンは最初から知っていたが、日々あの部屋から喘ぎ声のようなものが聞こえてくれば、色々と噂になっても仕方ないだろう。
シャンクスが船に女を乗せるのは非常に珍しい。
だから余計に目立ってしまい、その対応に追われていたのだ。
主にベンが。
シャンクスが自分から適当に話してくれればいいものを、彼はどういうわけだか、ここ最近考え込んでいることが多い。
そんな彼の様子に、クルー達はまた別の意味でざわついていた。
だからベンは、昔から付き合いのある一部の仲間に、ユーリのことを話した。
正直、1人で抱え込むには重い内容だったからだ。
案の定話を聞かされた仲間は、驚いたような表情をし、ベンと一緒に頭を悩ませていた。
ここ最近、シャンクスの様子がおかしいのは知っていた。
いや、本当は10年前からおかしかったのだが。
ベンはため息を吐いた。
四皇の1人である彼がこの様だと知れ渡ると、何時面倒ごとが起きてもおかしくない。
まず間違いなく真っ先に、ユーリが狙われるだろう。
そう簡単にいくほど、この船のクルー達も頭も弱くはないが、そうなったらそうなったで、今度は別の意味で頭が怖かった。
正直、彼のユーリに対する態度は異常だ。
「…確かに言われてみれば、この人たち海賊だ…」
そして何やらブツブツ言っているユーリ。
自分で言っといて何だが、こいつはそれで納得していいのか。
ベンは次第に痛くなる頭に手を当てると、タバコを揉み消しユーリの元へ近づいた。