第3章 後編 王の願い 少女の想い
「っぁ…シャンクス…血が」
ユーリが意識を取り戻すと、目の前には血濡れのシャンクスがいた。
抱きしめられている手を解こうにも、放してくれる気配はない。
「は、早く治さないと!!」
ユーリは腕を解くことを諦めると、そのまま能力を発動した。
「……っ!?…そうだ…」
能力を発動しても、シャンクスの傷が癒えることはなかった。
ユーリの脳裏に過ったのは、数日前彼の腕を再生した記憶。
腕一本再生したら、恐らく数日程度では次の能力は発動しない。
ユーリは表情は次第に青ざめていった。
「おいおい、貧血気味のおれより表情を青くしてどうするんだ」
シャンクスはそうおどけて笑うと、ユーリを離し、刺さっている剣を掴むと乱暴に引き抜いた。
「な、なにをやって」
ユーリは驚いて彼を止めようとしたが、何とでもないようにその場に座り込んだシャンクス。
ユーリは慌てて彼の傷を見た。
「はぁ…流石にキツイな」
シャンクスの頬に手を当ててその瞳を覗き込むと、どこか焦点が合ってなかった。
辛うじて急所は外されていたが、大量の血を流したのだ。
そしてそれは今も続いている。
即死を免れただけで、何時命を落としてもおかしくない状況だった。
ユーリは焦りと絶望から一瞬頭が真っ白になったが、慌てて仲間を呼びに行こうとした。
ユーリの能力が使えないなら、後は船医に頼むしかない。
立ち上がり急いで駆け出そうとしたが、その腕は彼に捕らえられた。
「…行くな」
瀕死とは思えないような力で引っ張られたかと思うと、シャンクスの腕の中に納まった。