第3章 後編 王の願い 少女の想い
宴が始まり暫く立った頃、新しい客が店に入って来た。
それなりの大人数で、店の人に空いている席へ案内されていく。
ちょうどユーリ達がいる方とは反対の方へと案内された彼ら。
ユーリは何となく気になって視線を向けた。
「……ん?」
大勢の仲間に囲まれて、その中心を歩いている人物。
ピンク色の髪の彼の姿に、ユーリは身に覚えがあった。
(シュ、シュライヤ!?)
ユーリは思わず身を乗り出して彼を凝視した。
映画の後、彼の人生は原作では書かれていない。
いや、あれは映画だけのオリジナルキャラなのか?
どちらにしても、彼の人生が進んでいることに、当然のこととはいえ感動を覚えた。
仲間たちと楽し気に宴を始めたシュライヤがユーリに気づくことはない。
結構ガン見しているにも関わらずだ。
因みにユーリはシュライヤのファンでもあった。
もちろん、ルフィとのやり取りを見て好きになったのだが。
(ど、どうしよう!?今を逃せばもう二度と会えないかもしれない!!せめてサイン?握手?うおおおおどうしたらいいんだ!!)
ユーリは混乱する頭で悶々と考え込んでいた。
そして何を思ったのか、その場を立ちシュライヤ 達の近くのカウンターに腰を掛ける。
耳を傾ければ彼らの会話が入って来た。
どう見ても不審な行動だが、酔っ払いで埋め尽くされているこの酒場で、ユーリの行動を気にする奴などいない。
約一人を除いて。
ユーリが悪いとは思いつつも欲望に勝てず盗み聞きしていると、色々なことが分かった。
海賊処刑人として海賊を嫌っていた彼は、どういう心境の変化か、海賊として航海をしているようだ。
しかも船長だという。
ユーリはその事実に驚いたが、仲間と楽し気にしている彼を見ていると、それはそれで良かったと思った。
大切な妹は、恐らくあのおじいさんに預けているのだろう。
過去のしがらみから解放された彼は、広大な海に興味を持ったのか。
彼らから聞こえてくる過去の冒険話を、ユーリは興味深く聞いていた。