第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
何やら悶々と考え込んでいるユーリを、シャンクスは静かに見ていた。
…こいつ、やっぱり覇気を浴びても倒れねぇな
しれっと覇気を発動していたシャンクスは、表情には出さないものを内心少し驚いていた。
試しに覇気の威力を少しずつ上げていくが、未だに彼女が倒れる気配はない。
表情がだんだん悪くなっているので、まったく効いてないわけではないのだろう。
子供相手に何やってるんだと仲間が知ったら怒られそうだが、残念なことに今のシャンクスを止める者はいなかった。
「…まっ、おれはもう少しここにいるから、考えててくれ」
表情は険しくなるものの未だに倒れないユーリをどう思ったのか、張り詰めていた空気が突然緩んだ。
そして再度笑顔になったシャンクス。
ユーリは漸く解けた緊迫した空気に、そっと詰めていた息を吐き出した。
そしていつのまにか頭に乗せられた大きな手。
その手は優しく、ユーリの髪を撫でていた。
「お前珍しい色してるんだな」
シャンクスは綺麗な緑色の瞳も好きだったが、彼女の持つ珍しい白髪も気に入っていた。
今まで多くの人を見てきたが、この珍しい組合せを持つ人物にあったことはない。
「…ど、どうも」
ユーリはされるがまま大人しくしていたが、内心は突っ込みたいことでいっぱいだった。
手つきこそ優しいが、無意識に身の危険を感じていた。
そしてユーリがジト目でシャンクスを見ていると、彼は何が可笑しいのか再び笑い声を上げ、漸くその重い腰を上げた。
「こんな時間に悪かったな。子供は早く寝ろよ」
そんな子供に対して大人気ない態度をとってた挙句、睡眠妨害してた本人がそれを言うのか。
ユーリは喉元まで来ていたその言葉を何とか飲み込むと、乾いた笑みでシャンクスを見送った。
「…はぁ、疲れた」
シャンクスがいなくなって漸く訪れた平穏。
ユーリは盛大にため息を吐くと、ベットに倒れるように眠りについていったのだった。