第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
「アイツと?」
「そうじゃ」
ここは花京院と行く方が自然だ。なのに何故アイツと?
承太郎は訳を聞くと、ジョセフは苦々しい顔になった。
「まあ若い者同士交流をもっと深めた方がいいじゃろう」とか言ってくると思ったが、どうやら別の理由があるらしい。
承太郎はこの時くらいは真剣に、祖父の言葉に耳を傾けることにした。
「今回だけでいい。彼女を少しの間、目を離さないでくれるか?」
目を離さない。
それはつまり彼女の行動を監視するということだ。
「何を考えていやがる?」
「お前も知ってるじゃろう。由来は
・・・
すでに2年前、DIOの存在を知っていたことを」
「それがどうし……。!」
「そうなんじゃ。彼女がワシらより圧倒的に
・・
早いんじゃ」
ジョセフがスタンドを発現したのは1年前。
つまり、DIOの存在を念写で確認したのはその頃かその後のことだ。
花京院は3ヶ月前、家族とのエジプト旅行。
アヴドゥルは4ヶ月ほど前、夜のカイロの町で。
そしてポルナレフは1年前、妹の敵である両腕とも右腕の男を探している途中に。
そうだ。よく考えたら、由来が
・・・・・・
誰よりも先にDIOに目を付けられていたのだ!
ジョースターの血統である自分たちならともかく、彼女が1年も前すでに狙われていた…
「彼女は前からDIOと何らかの繋がりがある。そこがどうも気になる」
彼女が言うには、DIOの下っ端が襲撃したらしいが…
「DIOは何らかの理由で、彼女に目を付けてきたのは明らかじゃ。だからもしもの時のために、お前がそばにいてくれ」
このホテル内に留まっていた方が安全だと普通は考える。
だけど彼女のことだから、エテ公の時みたく敵の襲撃にいち早く気付いたら、独断で動くかもしれない。
だから監視役が必要だと、ジョセフは判断した。
そして、判断したのはそれだけではない。
「承太郎。ワシは彼女のことを疑うつもりはないが1つだけ断言しておく。ワシは自分の能力(念写)で彼女の考えを読むつもりはない」
相手の考えていることも念写できるハーミットパープル。
それを使わない理由は、ジョセフは知っていたからだ。
彼女にはDIOとは別で並々ならぬ事情があることを。
『身内はいない…私1人だけだ』