第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
「!」
承太郎に心を読まれた気がして、背筋がビクッとなった。
「何でだいジョジョ?」
「このホテル内に敵がいるなら、その仲間も潜んでやがるかもしれねえだろ」
3人が同時にポンと手を打った。
「確かに今の状況、敵が我々の会話を盗み聞きしてる可能性が0とは断言できない」
「それはそうだ。すまん由来もう聞かないことにしよう。詮索しすぎたわい」
今さっきと状況が大いに変わって、由来は何も話せずキョトンとした。
承太郎は相変わらず冷静で賢い。
(もしかして…覚えてたの?)
“本当は…誰にも言いたくなかった”
あの時言ったことを、わざわざ覚えててくれたの?
由来は気付かれないように横目で承太郎を見たが、相変わらずの無表情で、何を考えているかも分からなかった。
だから、今の発言が意外でビックリこいた。
(……いい人?)
次に彼女はある重要なことが頭によぎった。
「しかしジョースターさん。とても言いにくいことですが、恐らく敵は…私の能力をすでに知っています」
理由は2年前すでに、敵に襲撃された際自分のスタンド能力を見せてしまったからだ。
「では、その襲ってきた敵の能力は何だったんじゃ?」
「辺りは暗かったので詳しくは見れませんでした。いや、暗くてもあからさまな能力すら見せなかったです敵は」
敵の顔を覚えているならスケッチしてみてはと提案したが、彼女は首を横に振った。
覚えてはいるが、絵が下手くそだから無理だと恥ずかしそうに言った。
スタープラチナのような精密な動きが出来るわけないと。
しかし、能力をとっくに知られているのは彼女だけではない。
操られてたとはいえ、DIOの配下であった花京院とポルナレフも同じことだ。
ただ、彼女の方が遙かに前から目を付けられてた。
2年前、敵を返り討ちにしたものの、彼女のことだから殺しはしなかった。
だが、そこが仇となって敵は由来の隙をついて逃げ出したのだ。
「あの香港沖の偽の船長は、私の能力を知ってたから最初に始末しようと誘い込んだんでしょうね」
「え!まさか、君はそれを知っての上で…」
まるでティータイムでくつろいでるくらいお淑やかに言う彼女に、花京院はまたゾッとした。