第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
(少し外に出ようかな…)
せっかくだしホテルの中とか探検しよう…
アンは部屋にいるだけじゃ物寂しく思い、ドアノブに手をかけた。
(そうだ!ジョジョの部屋にお邪魔しちゃおうかな~)
それか、外にお出かけできたらいいのにな~
部屋についている大きな鏡の前に来て、身だしなみをチェックした。
コンコン
「!」
ノックの音がして、駆け足でドアスコープを覗いたら、そこには意外な人物が。
「ジョジョ!」
噂をしたら!まさかジョジョから?何でこんなとこに?
ドアを開けて、要件を聞いた。
「何か用?」
花京院はドアの隙間から部屋を見渡したが、由来の姿が見当たらなかった。
「彼女はどこに?」
「由来?それなら今シャワー使ってる」
「そうか…少し待つことに…」
「私はここにいる」
『!』
アンのちょうど後ろに、シャワーあがりの由来がいた。
初期の高校のスカートに着替えており、タオルを両手で持って濡れた髪をワシャワシャ拭いてた。
随分マイペースだ。
(何?!)
この場にいる誰もが、承太郎でさえも気付かなかった。
彼が牢屋でジョセフの目を欺いたほどの速さを見せつけた時と同じような状況。
「うわっ!いつの間に」
アンはビックリして、その場で腰が抜けた。
「もしかして…何かあった?」
「ああ」
花京院の由々しきそうな表情から察し、濡れてオールバックになっていた前髪を直した。
「分かった。今すぐ行く」
そして、スタンド使いじゃないアンを連れて行くわけには行かない。
「いいか。お前はしばらく部屋から出るな」
「知らない人が来ても、決して開けるんじゃあないぞ」
「留守番よろしく」
3人は1212号室へ向かった。
(行っちゃった)
「しばらく部屋に出るな」って、何があったんだ?
退屈しのぎに部屋のテレビても見るかとリモコンを探した。
リモコンは2台のベッドの間にある小さな棚の上にあった。
(あった…あれ?)
そしてそこには、由来の髪留めも置いてあった。
シャワーを使う前に、ここで外したんだ。
「……」
アンは子供の好奇心で、手を伸ばした。
持ってみたところ、ごく普通の…
パカッ
髪留めの中心部分が開いた。そこには……
(え…?これは…)