第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
やっぱり!背の高さや瞳の色とか似てた
「ともあれ君もお父さんに早く会えるといいね」
「…うん」
その後、ガールズトークは数分ほど続く。
〈1122号室〉
「分かった。1212号室に集合だな?ジジイ」
女子部屋とは違い、この部屋は何やら緊迫した空気だった。
承太郎はちょうどジョセフとの電話を終えたところだ。
「何事だい?ジョジョ」
「行くぞ。どうやらヤバい事態だ」
敵がこのホテルに潜んでる可能性が出てきた。
詳しい話は後でするから、取りあえず部屋に来いと。
2人は部屋から出て、部屋の鍵は花京院が持った。
承太郎はジョセフの部屋とは反対の方向を歩き始めた。
「1212号室はこっちだぞ」
「“アイツ”もついでに連れてこいとよ」
アイツとは由来のことだ。
アンは無関係だから置いとき、もし彼女を電話で呼び出せば、独りで1212号室に向かうことになる。
敵スタンドが出現したばかりにも関わらず、単独で行動するのは危険だから、ジョセフはあえて彼女には電話をかけなかった。
そして2人にお迎えを頼んだというわけだ。
「なるほど。そこまで女の人を気遣うなんて、ジョースターさんは紳士だな」
(どこかの誰かと違って)
花京院は時に、言葉に出せないくらい失礼なことを思う。
紳士的ではあるが、少し辛辣なのが彼の性格である。
「やれやれ」
〈1010号室〉
シャー
ガールズトーク後、由来はシャワー室を使っていた。
外国のお風呂は、日本とは違い湯船はなくシャワーのみの狭い個室。
昔、日本に訪れた外国人が、日本人が湯船に浸かっているのを見てこう思ったらしい。
『あぁ何て事だ。人間が料理されている』
アンは部屋でうろうろしていて、幽霊船の時とは真逆だ。
一応由来も女の子なので、シャワーを浴びる余裕もなかった長旅で、しばらくおあずけだったから恋しかったのだろう。
温かいシャワーが体を伝い、由来は鼻歌もせずただ突っ立っていた。
しかし腕を伝う湯は、冷たい水に変わっていた。
周りには誰もいない、干渉される心配もない。
彼女はただ、目の前の鏡を見ていた。
自分の首から下げてある、2つの楕円形の金属板がついたチェーンネックレスを、寂しそうに見つめていた。
チャラッ
(……)
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