第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
<DIOの館>
ここには、館の主であるDIO以外に何人か存在する。
その1人は、DIOに“スタンド”を教えたエンヤという老婆。
人間だがDIOを心の底から尊敬し、忠誠心は誰にも負けない。
暗闇の中で老婆は、1本のろうそくを明かりに読書をするDIOにある報告をした。
「ストレングスがやられたそうですじゃ。あの小娘に」
ピタッ
本のページをめくる手を止めた。
「ほお…ジョースターやジョースターに寝返った2人でもなく、あのガキが?」
しばらく沈黙を置いて、本を閉じた。
「あの状態で…いや、さすがと言ったところか」
部下を殺されたら普通恨むか何か別の感情を抱くが、何故かそんなことをせずむしろ感心した。
その発言に、エンヤ婆は不満を覚え顔色を変えた。
「もうこれは明らかですじゃDIO様。花京院とポルナレフはおろか…あの小娘も、わしらの障壁にしかなりませぬぞ」
寝返った2人とは、かつて肉の芽を植え付けられた花京院とポルナレフのことだ。
DIOは彼らのこともよく知っていた。
(確かに…あの2人が、ジョースターについたのは少々惜しかったな)
DIOは椅子から立ち上がった。
いや、こうなることを…薄々は勘付いていたか
私の肉の芽は、優れたスタンド使いを手中に収めることができる便利な能力だ
しかし、スタンドパワーを弱体化させるという弱点がある
スタンド使いの強さの根源は、逆境に屈しない強い精神力
肉の芽は、その精神や自我にマイナスの影響を及ぼしてしまう
奴らがジョースターに勝てなかったのも、恐らくそれが原因
ジョースター側に仲間が増えたところで、我がスタンドの前では無力なことは変わらない
(しかし、ここからが本題だ)
問題は“あの小娘”
2年前に念写し存在は確認してはいたが、よりによって、ジョースターの方につくとは…
何故あれほどの奴が…
(いや、裁定するにはまだ早い)
エンヤ婆は敵だと断言するが、思い込みは時に盲点をつかれる
それは100年前の、このDIOの教訓でもある…
『君がッ泣くまで、殴るのをやめないッ!』
((こんな、カスみたいなやつにッ!))
ジョースター家で養子として過ごした幼少期。
ジョナサンとは義兄弟として、共に同じ家で過ごした青春時代。
その中で受けた“あの忌々しい屈辱”を思い出した。