第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
ガタッ!
緩んだ鉄の囲いの中から由来が出てきた。
承太郎に次いで、彼女もエテ公のスタンド拘束から解放された。
「お前…」
「私は大丈夫。そっちは…」
「UKYAAAA!!!」
ベギッ バギッ
『!』
エテ公が急に暴れ出し、腕力で氷にヒビを入れた。
「くどい」
由来は嫌そうな顔をして、ため息混じりに呟く。
氷結をさらに上に広がせ、氷は往生際が悪いエテ公の腕ごと飲み込んだ。
ヒエェ~
「無関係の船員10名の命を奪ったなら…これくらいの制裁でも足りないくらいかな?」
パキ…パキッ
エテ公の身体のほとんどが凍りつき、オラウータンの等身大氷のオブジェができた。
周りの空気も冷気を帯びる。
拘束するされるの立場が逆転し、もう勝負は決まった。
ガタンッ!
船が大きな揺れを起こし、3人はよろめいた。
グニョグニョ
「ゆ、ゆがんでいる…わ。この船グニャグニャになっているわ!」
エテ公が倒されたことで、船スタンドの原型が崩れかけている。
3人は至急ジョセフたちと合流し、全員は由来が作った氷にまた乗り避難した。
元の服に戻ったアンは、貨物船を遠く離れた海上から眺めた。
「し…信じられないわ…船の形がかわっていく…あんなにボロでちっちゃな船に」
「なんということだ…あの猿は、自分のスタンドで海を渡って来たのか…恐るべきパワーだった。はじめて出会うエネルギーだった…」
やはり、あのアヴドゥルでも初めて見る敵。
その恐るべきスタンド使いを従わせるDIOは、きっともっと恐ろしいんだろう。
「我々は完全に圧倒されていた。もし誰も気付かなければ、まちがいなく…やられていただろう。しかし、こいつ以上の我々の知らぬ強力なスタンドとこれからも出会うのか?」
花京院はくしで髪を整え、承太郎はタバコの火をつけ、由来はただ海をずっと眺めていたのでジョセフの言葉を真剣に聞く者はいなかった。
「ガムかむかい?」
ポルナレフもこんな呑気だ。