第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
数分前も…
『理不尽だ…』
一体このサルのスタンドはどこに?
由来は床とサルの体毛をふと見た。
この程度の水では経路がまだ準備不足
床と壁とエテ公が全て繋がるよう且つ、最小限に凍らせなければ
((こっちから仕掛けるか…))
(水で凍らせるコースを作ることで、俺たちを巻き込むことを防いだってことか…)
これは氷の結界ってわけか
承太郎も拘束された時、若干壁が濡れていたことに気付いていた。
(まさか、自分よりスタンドを優先して外に出し、そのまま戦うとは…なんて奴だ)
そんな驚きとは別に、ホワイトシャドウの様子が何だかいつもと違って見えた。
グルルルッ
以前よりうなり声が低く、目が野生の熊みたく凶暴化している。
口元が赤い血で少し汚れている。
さっきの包丁の切り傷がにじんでいるのだ。白いから余計に目立つ。
人間じみたエテ公とは逆で、人間が操るスタンドなのによほど動物らしく見える。
いつもの冷静な由来とは違い、理性があるようには見えない。
このままだとエテ公をさらに噛み殺しにいく、そんな危うい空気になっている。
由来を今スタンド拘束から出すことより、そのことが気になった。
『私のスタンドは自分でも“制御”(コントロール)が難しいんだ』
『誰かを傷つけば、ホワイトシャドウも傷つけることになる』
『私のスタンドを、あんな人殺しの道具にはしたくない』
「……」
ポン
承太郎はつと、ホワイトシャドウの肩当たりに触れた。
スタンドとは、魂を具現化したものだから触ることはできない。
しかし何故か、白クマのモフモフした体毛に触れられた。
ホワイトシャドウは承太郎の方を見た。
「ありがとうよ。助かったぜ」
すると、うなり声が収まりあっさり大人しくなった。
何故、こんなことをしたのか?
花京院を助けた時みたく、彼自身もよくは分からなかった。
以前は、敵が味方か判別できず警戒したが…今はそんな必要はない。
「…クゥ」
白クマはそれに返事をするような鳴き声をあげ、承太郎の手のひらにスリスリした。
まるで犬が飼い主に甘えているようだった。
(凶暴な熊というより、犬みてーだな…)