第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
グァオォ!
エテ公は叫び声に驚いて身を引いたが一瞬遅く、鋭い爪に引っかかれた。
「ウギャアギャ!」
顔に爪痕が刻まれ、流血が目に染みて仰向けに倒れた。
本体が怯んだことでパイプの拘束は弱まり、その隙に承太郎は抜け出すことができた。
「…やれやれ」
本体の姿が見えずに手助けしてもらうのは、2度目…いや3度目か
エテ公はしぶとく、めちゃくちゃ怒って立ち上がり、壁からネジを飛ばして反撃してきた。
ホワイトシャドウの元から持つ素早さなら簡単によけられ、
スタープラチナの精密な動きであればいともたやすくつかみ取れた。
「ウギャアアア!」
そのまま白クマに向けて突進してきた。
壁からはいろんな鉄具が飛び出て、一斉攻撃を仕掛けてくる。
承太郎はスタンドを構えたが、ホワイトシャドウが自身の体でそれを押し止めて首を横に振った。
(ん?)
・・・・
エテ公がある箇所に足を踏み入れた瞬間、
パキパキパキッ
「?!」
シュウンッ… ドーン!
壁、廊下、エテ公の体が、一瞬で凍りついた。
(これは…!)
パキ…パキ…
エテ公を中心に、そこから分裂するように凍ったのだ。
壁も凍ったことにより、鉄具も凍り付けにされ操作不可になった。
「ウキャアキャ!」
なんとか抜け出そうとしても、下半身ががっちり凍らされ身動き一つも取れない。
(この妙な凍り方。これは…水だ!)
蜘蛛の巣のような形で氷が張ってるのは、もともと水がそういう形で床にこぼれていたのだ。
それも偶然なんかではない。
さっき、由来がシャワー室でアンを助けた時、いやその直前にすでに、ブーツの裏をあえて水に浸していた。
そして廊下に出た後、包丁をよけながらブーツ裏の水でそのコースを描いていた。
廊下の真ん中に移動してうろうろしたのも、
・・・・
そのためだ。
さっき、エテ公に向けてボトルを投げつけたのは、エテ公自身に当てるのではなく、
・・・・・・・・
水を被せるためにわざと外したのであった。
そして今、そのコースの中心に誘い込み、足を踏み入れたところで、水に濡れた床とサルを一気に凍らせた。
壁の方も、あらかじめ彼女が水をかけたのだろう。
全ては彼女の計画通り。
さっきエテ公が、ボトルの水を被った時点で、彼女の策にはまっていたのだ。