第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
「……ウキャキャ」
「正解だ」とでも言うように、オラウータンは不敵な笑みをする。
だが素直に自白はしても、おとなしく倒される気はなさそう。
(バナナあげれば手を引く相手でもない。ただ者…いや、ただ猿じゃない…)
・・・
今一番の問題は、この子
人質とるのが悪党の専売特許
アンをこの戦野から逃がせれば
何とか猿を、
・・・
私以外誰もいない場所に誘い込めたら
ドドドドッ
オラウータンは由来に向かって突進してきた。
人間の5倍の力があれば、腕など簡単にへし折れる。
「やはり“私”(本体)を狙うか」
そんな手は、もう知ってる
バキッ
ホワイトシャドウで、シャワー室のカーテンを食いちぎり、闘牛で使う赤い布代わりに使った。
「ウホッ?!」
ドガンッ
目を欺かれたマヌケな猿は勢いのまま壁に突進した。
「こっち」
アンの手を引いて急いで廊下に出た。
パキキキンッ
そして、今通った扉を凍らせることで、シャワー室にオラウータンを封じ込めることに成功した。
凍った扉は、いくらオラウータンでも開けることはできない
(これで、少しは時間稼ぎになる…)
アンは何が何だか分からずただ立ち尽くしていた。
オラウータンの首から血が出たり、扉がいきなり凍ったり…ワケが分からない
(寒い…)
ブルブル
服を着てないせいか、寒くなってきた。
バサッ
急に大きな布のようなものを渡された。
「それ、しばらく貸しておくよ」
それは由来の白いトレーナー。
彼女でも大きめのサイズだから、アンが着れば太ももまで隠れた。
「あ、ありがとう」
着てみると、内側がモコモコして暖かい。
(由来さん…着膨れするタイプだったんだ)
トレーナーが大きいせいか、シャツとブレザーだけになると意外に細い
(ここから早く脱出したいけど、他の扉は閉まられている。この廊下を通って行くしかないか…)
「ケガはない?」
「うん…」
「ならいい。取りあえず一緒にジョースターさんのところへ…」
(!!)
アンは目を疑った。
空中に浮かぶ包丁が、由来の頭の後ろに向かってきた。
「う…後ろッ!」
「!」
アンの大声で振り返ったが、遅かった。
ガンッ!
鋭利な包丁が顔に直撃した。