第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
「…こんな所で何してやがる」
そう聞かずとも、花京院が何をしてたかなどすぐに分かった。
最初の保健室の時も、陰気な手でこそこそしていたし。
「アハハ…ハイエロファントを這わせていたら、偶然君たちの会話をスタンドを通して聞いてしまってね」
すまなかったと苦笑いをした。
しかしさすが、射程距離Aのハイエロファントだ。
パワーは比較的なくとも、隠密行動はピカイチだ。
「僕が聞いてしまったことは、彼女には言わないでくれないかい?もちろん、僕も誰かに言うつもりはないんだ」
「フン」
あの寡黙の承太郎がそんなことするわけないのは、花京院も読者の人もご存じのはずだ。
花京院の苦笑いが、悲しそうな笑みに変わった。
「…ジョジョ。僕は彼女の言ったことが、何となく分かる気がするよ」
“スタンドは包丁と同じ”
由来と同じく、生まれついて持ってしまった花京院にも、人一倍大変なことがあったはず。
3ヶ月前、スタンド使いだからであって、DIOに目を付けられてしまったこともそうだ。
しかしそれを嘆いてもしょうがない。周りと違っても、それを体の一部として生きていくしかない。
たとえ、理解者がいなくとも…
それでも彼女は、“道を踏み外したくない”と言った。
それを知った花京院は、少し自分が情けなく思った。
以前自分は、己の心の弱さが仇になって、DIOに心身ともに支配されていたから
「彼女は…強いな…」
精神的にも、僕は見習うところがあるかもしれないね
「…いや、アイツがスタンドを使って戦ったところを見たことねえから分からんよ」
よく考えてみればこの旅で、由来が敵スタンドと
・・・・・
直接戦ったことは一度もない。
スタンドの実力を、この目で確かめたことがないので実際どれほどの強さでどういう風に戦うかも、2人はまだ知らない。
「確かにそうだ…!使ったとしたら僕が…君を石段から落とした時や、ポルナレフの火傷の処置とかで戦闘が全くない」
いや、それより…
何より信じがたかったのは、彼女のさっきの言動
『自分でも“制御”(コントロール)が難しいんだ』