第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
世には、スタンドで金儲けする人もいれば、犯罪に手を染める輩もいる。
まだ子供だからでもあるが、由来が石段の時みたく、人助けのために使うケースは珍しいかもしれない。
スタンドは一般人には見えないから、“殺人”も簡単にできる。
肉の目を埋め込まれてた花京院もそうだった…
しかしどんなに理不尽でも、誰も彼らを法律で裁くことはできない。
彼らに秩序と道徳で統括された社会など無駄なのだ。
そんな世界で踠こうとする者達。
毒を以て毒を制し、悪に染まらず屈強な精神を持つスタンド使い達。
それが、承太郎や由来なのかもしれない。
彼女は無意識に自分の左肩に触れた。
(今思えば…ジョースターさんたちに出会った時…心の中では少し…嬉しかったよ)
スタンドを持ちながらも、“いい人”たちだったからね。
彼女は承太郎と同じ、悪に対する正義感を秘めていた。
彼女が最も嫌う言葉の1つが、“理不尽”。
何も悪いことをしてない人間が不条理に傷つき殺されるのが嫌だ。
・・・
だから、「ホリィを救いたい」と思った。
そんな心優しい由来は、生まれ持ってしまったスタンドを
どんな思いをして、今まで使ってきたのか?
どんな思いで、それと向き合ってきたのか?
しかも、身内がいないということは、理解者がいないということ。
スタンドの幅広い知識や大人らしい冷静な身性は、その積み重ねが影響したのかもしれない。
由来は足元にあった空の瓶二本に、水道の水を入れた。
「とにかく忠告しておくよ。アナタは賢いから…さっき見て分かったはず。私には近付かない方がいい」
それを持って、ジョースターさんのところへ行くと断ってから厨房を出た。
「……」
残された承太郎は、元通りの水道に触れてみた。
やはり冷たい。まるで、氷に直で触ってるようだ。
承太郎はスタンドを発現してからまだそんなに経っていない。彼女とは違う。
だが、一つだけ気にかかることがあった。
(やれやれ。留置場にいた時の俺と、同じようなセリフを吐きやがって…)
水道から手を離し厨房を出ると、今度は意外な人物に出会った。
「花京院」
その様子からして、2人の今の会話を盗み聞きしていた。