第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
「……」
無口な承太郎でも内心驚いていた。
スタンドとは、その本人の精神力で操るもの。戦いの本能で行動させるもの
由来は優れたスタンド使いであり、その素質があるのは申し分ない。なのに何故…
「でも…それでも誰かを傷つけてしまえば、その人はおろか…自分のスタンドも傷つけることになってしまう」
「“スタンドを傷つける”…だと?」
由来はカウンターに置いてた包丁を手に取った。
「同じ包丁でも使い方によっては、三つ星レストランの一流シェフになり、もしくは…家族さえも殺す極悪非道の殺人鬼にもなってしまう。同じスタンドでも、使い方次第で存在意義が全く変わる。結局…スタンドっていうのは、この包丁と同じだと私は考えている」
それはつまり、“自分は殺人鬼になり得る”と主張していた。
持って生まれてしまった人たちは、その分かれ目でそれぞれの人生を歩む。
今まで襲撃してきたスタンド使いも、金に目がくらんで包丁の使い方を誤ってしまった…
(いや、スタンドに使い方など存在しない。取扱い説明書などあるわけない…そこが包丁とは違うところか)
「……」
承太郎は黙ったまま由来の言葉に耳を傾けた。
「アナタも知っているとおり、DIOは紛れもない後者だよ。そしてはっきり言えるのは…私はスタンドを、あんな人殺しの道具にはしたくない」