第1章 序章
(シロクマ…?)
とっさに降りて後ろに下がり、獣の赤い目がずっとこちらを見つめた。
(何故肉食獣が?)
こんなでけー動物…この付近に生息するはずがねえ。動物園から脱走したとも考えにくい。
承太郎は薄々勘付いた。
先日、アヴドゥルが言った突拍子もない存在。つまり、この動物はスタンドの可能性がある。
本体が近くにいるかもしれないと、周りを見渡した。
(シロクマは獰猛な肉食獣…アザラシの頭を簡単に噛み砕く顎も持つという。襲われでもしたらひとたまりもねえ)
自分もスタンドを構えた。
ノシノシ
両前足の手枷をジャラジャラ引きずって、ゆっくり近付いてきた。
(来るか…!)
しかし数歩ほど間隔を置き、屈んで承太郎の膝に向け白い息を吐いた。
シュゥン
「!」
妙な寒気を感じ、膝を見たら出血が止まり傷口も塞がっていた。
(これは…?)