第1章 序章
シロクマはまた数歩後ろに下がった。
「クゥ~ン」
愛らしい鳴き声とうるうるとした目で見て、何もしてこない。
震えて怯えている?俺を怖がっているのか?まるで逆に食べられるのを恐れているみたいじゃあねえか。
(さっきこの獣がクッションになって、俺はこれ以上ケガをせずに済んだ。今の止血を施した冷気。コイツは…)
ピクリッ
シロクマは攻撃してくることなく、空気と同化するように消えてしまった。
(やはりあのクマ…スタンドだ。しかし、その本体はどこだ?何故姿を見せない?)
承太郎は自分のスタンドを引っ込ませた。
膝の治りかけの傷にまだ痛覚はあった。
(ムウ…木の枝で切ったか?…い…いやちがう…落ちる前に切れていたッ…だから 石段をふみはずしたのだ…たしかだ…しかし…)
辺りを見回しても、クマのスタンド使いらしき怪しい人物も、足を切った要因らしきものもない。
承太郎が知らぬ間に、石段の上にはデッサンと筆を持った怪しげな高校生がいた。
「…ほう…なかなか強力な“幽波紋”(スタンド)を出すやつだ…なるほど。あの方が始末しろとおっしゃるのも無理はない。
しかし…わたしの“幽波紋”(スタンド)の敵ではない」
そして、木の上にもう1人。
「……」
下は制服のスカートで、上はYシャツに白いフードトレーナーとその上にはブレザーを着て、赤い瞳を持つ若者。
後に、この3人は同じ部屋で鉢合わせするのである。