第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
ゾッ…
由来も今気が付いた。右手が水と一緒に凍っていることに。
シュウン
すぐに水道を元通りにして、右手をポケットに入れて何事もなかったかのように振る舞った。
「何かあったのか?」
承太郎が由来と同じ質問をし、さっきと逆の立場になった。
「いや。何もなさすぎて、今は異変を探すためにふらふら探索している。
それより捜索しても、乗組員がいないのはほぼ確実だと思うよ」
「捜してるのは船員じゃねえ、スタンド使いだ。その可能性が出てきた」
「何だって…?」
承太郎が言うには、クレーンがひとりでに動いて船員の1人を刺し殺し、その不可解な現象は間違いなくスタンド使いの仕業であるらしい。
「じゃあ乗組員はソイツに殺され…いや、それはあり得ない。
・・・・・・・
ここに着いた時、船には血痕が一滴もないから」
「ん…何故それが分かる?」
「私……のホワイトシャドウは血の臭いに敏感なんだ…嫌でもすぐ分かる。アナタが日本で、石段から落ちそうになった時に、すぐ反応できたのも、それが原因なんだ……」
承太郎は合点がいった。
今思えば、あの一瞬。微量な切り傷の出血も分かるほどの嗅覚。
(氷だけじゃなく、生物として基本的な能力もあるってことか。本物の熊みてえだな)
「……」
由来は苦い顔を浮かべた。
「本当は…誰にも言いたくなかった」
「?」
「血の臭いが分かるなんて、まるで吸血鬼であるDIOみたいで、まるで自分が人外のような気がして……いや、怪我人の位置がすぐ分かるから、必要な能力だね」
それは承太郎に言っているというより、まるで自分の心から漏れ出した本音。
いわば本心の独り言のようだった。
「取り敢えず、あなたには話しておくよ」
承太郎は、さっきから別の気になることがあった。
(震え?)
由来の右腕が微かに震えていた。
(コイツ…)
・・・
さっきの反射的な氷結。まさか…
「おめえのスタンド、能力の制御ができないのか?」
「!」